群馬県での宿泊観察会報告  

          開催日      2024年 9月 8日(日)~9日(月)  

       集合場所   花咲温泉民宿 みやま 

       観察地    武尊牧場周辺    
   

       参加者    15名 (会員;13名、一日会員;2名)  
 
       実施時刻  9月8日 15:30~17:45 同定会
             9月9日 朝食後、記念撮影し随時解散

       鑑定人    福島隆一、栗原晴夫、近藤芳明   

       世話人    福島隆一、岡田久枝

       報告     福島隆一
   
       撮影     栗原晴夫
 

         

        
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       集合写真                    朝食の様子    
         
         
      同定作業                    福島会長による解説

 キノコ観察会報告

2021年の宿泊勉強会に武尊牧場を企画し、下見や宿との打ち合わせをしておりましたが、コロナウイルス感染防止により、中止と成ってしまいました。宿の予定などが判らないと期日が決められないので、今年度は、2024424日にミヤマの下見と打合せに行ってきました。私は、宿泊勉強会の世話人を初めて行いましたが、参加者との連絡、保険の名簿作り、宿の部屋割り等やってみて、世話人の大変さが理解出来ました。宿での会計処理や保険料の振り込み等岡田さんや栗原さんに大変お世話に成りました。
 今回の参加者は、新しく入会された方が多く、現地の事が不案内な方が多かったので午前10:00までに宿に来ていただければ、武尊牧場まで案内しますという事を伝えて有りましたので参加者全員定刻に集合しました。以前行った観察会の時と牧場の様子がだいぶ変わって、グランピングサイト、フリーテントサイト等の新しいし施設が出来た為か、駐車料金が1000円掛かる様に成りました。下見の時に牧場まで足を運び、詳細な情報収集を行うべきであったと反省しています。皆さんには、駐車場1200集合と言う事で武尊山登山道入り口付近の散策コースでキノコ探しをして戴き、私は、駐車料金を納めるために、管理棟に行き色々お話を聞きました。そのまま管理棟裏手のログハウスの白樺樹林帯や更に北側の白樺・カラマツ樹林帯のきのこを見てきました。最初に目に飛び込んできたのは、カバノアナタケでした。良く見ると色々な白樺の木に石炭の塊のような姿が見えました。カバノアナタケは、熊農時代に人工栽培の研究をしていたので、思い出のあるきのこです。白樺の倒木には、ツリガネタケが無数に生えておりました。ウスヒラタケ、ヤケイロタケ、スギタケモドキ等、所狭しの状態でした。フリーテントサイトは、周りが芝生で覆われ、日当たりが良いので白樺の枝葉が良く茂り、ヤマイグチ、カバイロツルタケ、クロハツ等様々な菌根菌が見られました。予定の1200に駐車場で合流しましたが、ゲリラ豪雨に襲われ、早目に宿に引き返しました。断続的に大雨が降って来たので、外の小屋で鑑定会をする予定を変更し、宿の二階にある大広間にブルーシートを敷き、きのこを並べました。
 白樺林が有る所では、カンバタケ、ツバフセンタケ、カラハツタケ、カバノアナタケ、ヤマイグチ、ツリガネタケ等のきのこが見られます。多くのきのこは、高等植物の進化と共に進化をして来たので、どの様な樹種が有るかにより、どの様なキノコがでるか予測できます。
 それにしても、新鮮なカンバタケは、大型で軟らかく、如何にも食べられそうでとても見栄えがしますね‼
 久しぶりにオオオシロイタケが見られました。幼菌を良く見ると肉眼でも荒い毛に覆われているので判断出来ます。ベニタケ科の基準種であるアカカバイロタケが見られました。採集して間もない茸は、赤見が強く、なぜアカカバイロタケと言うか良く分かりました。翌朝見た時には、見慣れた樺色でした。クロハツの上にヤグラタケが出ていましたが、この仲間に柄の細いヤグラタケモドキが有ります。調べるために持ち帰り検鏡しました。多くの個体では、時間の経過とともに白い子実体が褐変し、検鏡すると金平糖の針状ではなく結晶体のような突起物を付けた無数の硬壁胞子が見られます。最後まで白かった子実体も3週間程すると、褐変し無数の硬壁胞子に成りました。今回はヤグラタケだけでした。面白いもので、ヤグラタケの組織培養をした場合、ヤグラタケの子実体ができるまでに10日程掛かりますが、硬壁胞子を栄養寒天培地に落とした場合には、早ければ4日目に子実体ができます。何でこうなるのでしょうか?またクリカワヤシャイグチの様な傘の色をしたきのこが有りましたが、管孔部が大きく下側に張り出し、カットして見た所、管孔部の中央部分が下に垂れ下がる程発達している為である事が判りました。検鏡した結果、総合的に見てクリカワヤシャイグチであると同定しました。
 何時もの事ですが、アセタケ属、フウセンタケ属、ベニタケ科、ハラタケ属等名前が判らないものが多く、きのこの分類は、難しい限りです。既知のきのこであっても、きのこの形質は、幼菌、成菌、老菌、腐敗の各段階で大きく異なるので、いろいろな段階のきのこを見ていないと同定が出来ません。図鑑やネットの画像も有効ですが、現地で生育しているキノコを見る事もとても大事な事です。きのこの匂いや味、手触り、子実層の様子、柄の形質、柄の根元の様子、傘の色や表面の様子等、あらゆる方向から何度も見る事が大事です。雨の後の濡れ具合により判断に苦労することが何度あったか判りません。光の当たる所と暗い環境で生育したキノコは、別種であると思ったことが何度も有りますし、背の高い草の中で生育したキノコは、柄が徒長することが多く判断に迷うことも多々あります。傘や枝の組織をカットし、空気に触れると様々な色の変化が見られたり、触れた所の色が変わったりするのを見ていると思います。生き物は、種の遺伝的な要素だけでなく、環境との相互作用により形質が左右されることを肝に銘じておく必要が有ります。
 宿のミヤマ様には、今までに3度お世話に成りました。手作りの美味しい食事を提供して戴ける事や素朴で気さくに対応して戴ける事等が良いと思います。今回も食事の折に地元の牛乳を提供して戴きました。食後にはデザートの梨を剥いて戴いたり、畑で作った小豆で餡子を作り、大きな大福をお土産に戴きました。何よりもありがたかったのは、天候不順のため、室内の大広間を提供して戴き、いつでも茸を眺める事が出来ました。同定には時間が掛かります。久々に宿泊してきのこの勉強が出来ました。参加した皆様とお酒を飲みながら歓談出来ましたことに感謝申し上げます。有難うございました。                                文責    福 島 隆 一

 

   
  ツバフウセンタケ               コンイロイッポンシメジ

   
  アカツブフウセンタケ             アケボノドクツルタケ
  
   
  カバイロツルタケ                カラカサタケ

   
  キホコリタケ                   タマゴタケ

   
  ブナノモリツエタケ               地衣類(アカミゴケ)



観察目録 2024.8.09群馬県上州武尊牧場周辺観察会

担子菌門、ハラタケ類

ハラタケ目

ヒラタケ科

ヒラタケ属      ウスヒラタケ

ヌメリガサ科

アカヤマタケ属    オオヒメノカサ近縁種

シメジ科

ヤグラタケ属     ヤグラタケ

シメジ

キシメジ属      カラマツシメジ

カヤタケ属      カヤタケ

ツキヨタケ科

モリノカレバタケ属 ミツヒダニオイカレバタケ、モリノカレバタケ属不明2

ラッシタケ科

クヌギタケ属     サクラタケ、アシナガタケ、ヒメチシオタケ

ラッシタケ属    ニカワアナタケ

ポロテレウム科

ヒロヒダタケ属   ヒロヒダタケ

タマバリタケ科

ツエタケ属     ブナノモリツエタケ

ハラタケ科

ホコリタケ属    キツネノチャブクロ、キホコリタケ

テングタケ科

テングタケ属     タマゴタケ、カバイロツルタケ、アケボノドクツルタアケ(仮名)、ガンタケ、ヒメコナカブリツルタケ

テングタケ属不明種

ハラタケ科

カラカサタケ属   カラカサタケ

キツネノカラカサ属 不明2

モエギタケ科

ニガクリタケ属   ニガクリタケ

スギタケ属     スギタケモドキ

アセタケ科

アセタケ属     オオキヌハダトマヤタケ、不明アセタケ属4

フウセンタケ科     

フウセンタケ属   イロガワリフウセンタケ、ツバフウセンタケ,

アカツブフウセンタケ、フウセンタケ属不明種多数

イッポンシメジ科

イッポンシメジ属   クサウラベニタケ、イッポンシメジ、アカイボカサタケ

コンイロイッポンシメジ、イッポンシメジ属の一種

ヒダハタケ科      

ヒダハタケ属    ヒダハタケ

イグチ目

イグチ科    

キヒダタケ属    キヒダタケ 

ハンノキイグチ属  ハンノキイグチ    

ヤマドリタケ属   ヤマドリタケモドキ、ミヤマイロガワリ?

オニイグチ属    オニイグチ、

ヤマイグチ属    ヤマイグチ、ヤマイグチ属の一種

シワチャヤマイグチ幼菌?

ニガイグチ属    ミドリニガイグチ

ヌメリイグチ属   ハナイグチ

ヤシャイグチ属   クリカワヤシャイグチ

ニセショウロ科   

ニセショウロ属   ウスキニセショウロ

ベニタケ目

ベニタケ科

ベニタケ属     アカカバイロタケ、カワリハツ、クロハツ

          ウコンクサハツ、不明ベニタケ属多数

チチタケ属     アオゾメツチカブリ、カラハツタケ、チチタケ

チョウジチチタケ、チチタケ属の一種

キクラゲ目

ヒメキクラゲ科

ニカワハリタケ属   ニカワハリタケ

 

ヒダナシタケ類

タマチョレイタケ目

タマチョレイタケ科

タマチョレイタケ属 アシグロタケ

ヤケイロタケ属   ヤケイロタケ

ツリガネタケ属   ツリガネタケ、大型のツリガネタケ

カワウソタケ属   カバノアナタケ

ウロコタケ科      

キウロコタケ属   チャウロコタケ

マツバハリタケ科   

ニオイハリタケ属  チャハリタケ

ツガサルノコシカケ科

カンバタケ属    カンバタケ

オオオシロイタケ属 オオオシロイタケ

所属科未確定 

ミダレアミタケ属  ニクウスバタケ

 

 

子嚢菌類

ピロネマキン科

アラゲコベニチャワンタケ属 アラゲコベニチャワンタケの一種

ビョウタケ科

ロクショウグサレキン属   ロクショウグサレキンモドキ

ヒメノスキフス属      ヒメノスキフスの一種

 


 

            


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